第20章

電話の音が鳴り、樋口浅子はディスプレイに表示された名前を見て、ためらいながら裕樹の方をちらりと見た。

相澤裕樹は自分が聞くべきではない相手からの電話だと即座に察し、気を利かせて立ち上がった。

「ちょっとトイレに行ってくるよ。ゆっくり食べてて」

樋口浅子がほっとした表情を見せるのを見て、胸に酸っぱい感情が湧き上がった。西原貴志からの電話ではないかと密かに推測した。

裕樹が席を外すと、樋口浅子は電話に出た。

「もしもし、浅子ちゃん?」相澤おじいさんの声が聞こえてきた。

樋口浅子はナイフとフォークを置き、相澤おじいさんの声を聞いて微笑みながら答えた。「はい、相澤おじいさん」

「浅子ち...

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